アーティストにも「栄枯盛衰」がある
どれほど才能がある作家であっても、売れ続ける保証はどこにもない。
作品が評価され、多くの人に届く時期もあれば、思いのほか売れ行きが伸びない時期もある。
それは決して珍しいことではない。むしろ、アーティストとしての活動を長く続けていれば、誰もが一度は直面する壁である。
原因はさまざまだ。市場全体の流れ、季節や時期の要因、過去に買ってくれていたコレクターの興味が他へ移ることもある。
そうした変化の中で「売れ続ける」ためには、単に作品を作るだけでは足りない。常にファンを獲得し続ける努力が求められる。
「登りのエスカレーター」に頼るべからず
時に、一部の作家は突然話題となり、まるで「登りのエスカレーター」に乗ったかのように売れ始めることがある。
バズと呼ばれる現象で、SNSでの拡散やテレビなどのメディア露出によって、一気に注目が集まる状況だ。
しかし、それはごく一部の例外であり、再現性は低い。偶然の風が吹いたとしても、それに頼っていては持続的な活動にはつながらない。
登りのエスカレーターに乗れなかったとしても、自らの足で階段を一段ずつ登る覚悟が必要だ。地道な努力こそが、プロの姿勢である。
売れない原因の多くは「作品の露出量」にある
売れない時期が来たとき、多くのアーティストは「作品が良くないのでは」と自問する。
だが、問題は必ずしも作品そのものではない。
むしろ、「作品が見られていない」ことこそが、本質的な課題であることが多い。
30万円以下の価格帯の作品においては、価格が高いか安いかはそこまで大きな影響を及ぼさない。
また、作品を少し変更したところで、劇的に売れ行きが変わるわけでもない。
本質的に問われるべきは、作品の届け方である。
プロモーションを避けるアーティストは不利である
「プロモーションをするのはかっこ悪い」と考えるアーティストも一定数存在する。
だが、その考えはアーティストとして活動を続ける上で、大きな障害となる。
なぜなら、アートの仕事の中に「作品を伝える」ことは当然に含まれており、それを怠ることは、自らの表現を半分しか伝えないことに等しい。
展示の直前にSNSで「ぜひ来てください」と投稿するだけでは、単なる独り言と同じである。
誰かのスケジュールの中に、自分の展示を差し込んでもらうには、もっと深い情報と継続的な発信が必要になる。
作品の内容、展示の意図、制作背景などを誠実に伝えなければ、人の心は動かない。
情報の「質」と「量」の両方が問われるのである。
自分のファンを持つことが最も強い
ギャラリーに全てを任せるという考え方もあるが、売れっ子になるまではそれでは不十分だ。
展示を重ねる中で、自分自身のファンを持っておくことが、長期的には圧倒的な強みになる。
複数のギャラリーに出展する場合でも、個人にファンが付いていれば、そのファンは展示場所に関係なく、作品を追いかけてくれる。
つまり、自分自身が「ブランド」として成立していくのである。
そのためには、日々の発信、丁寧な説明、そして双方向のやりとりが欠かせない。
SNSというツールは、単なる告知板ではなく、信頼を築く場所である。
クラウドファンディングは現代の名刺である
近年では、制作費をまかなう手段としてクラウドファンディングを活用する作家も増えている。
この方法は単なる資金調達手段ではなく、「何をしたいのか」「なぜそれをするのか」を社会に問いかける仕組みでもある。
しっかりと計画を立て、明確に発信すれば、共感する支援者が現れ、資金とともにファンも増える。
プレマーケティングの一環として、アーティストにとって理にかなった行動である。
また、返礼品(リターン)を通して事前に作品を販売することもできるため、展示を控えた作家にとっては非常に有効だ。
誠実に対応すれば、次の活動にも良い循環が生まれる。
真摯に発信し続ける者だけが生き残る
現代は「知られること」がすべての出発点である。
誠実な発信を続けることで、少しずつではあるが、確実に作家としての土台は築かれていく。
逆に、それができていないのであれば、単純に努力が不足しているというだけの話だ。
アーティストは、作品をつくる職人であると同時に、自らを伝える表現者でもある。
使えるツールはすべて使い、地道に、しかし力強く、自らの存在を伝えていくしかない。
売れ続けることは、才能ではなく構えの問題である
アーティストが自立して活動を続けるためには、作品のクオリティだけでなく、それをどう届けるかという視点が欠かせない。
作品、価格、販売チャネル、プロモーション――この4つが揃って、初めて「売れ続ける作家」になる。
プロとしてアートに関わるのであれば、売れないことを嘆くよりも、まずは届け方の構えを見直すべきである。
Schedule
Public View
4/19 (sat) 11:00 – 19:00
4/20 (sun) 11:00 – 17:00
2025年3月14日(金) ~ 4月5日(土)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
※初日3月14日(金)は17:00オープンとなります。
※オープニングレセプション:3月14日(金)18:00-20:00
※3月20日(木)は祝日のため休廊となります。
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F